なつこのはこ(創作のはこ)

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ショート・ショート

「止まっていた時間」その2

  (昨日のつづき)

 冬期講習も、同じ予備校へ通った。
 彼女の姿をみつけた時は、なんだか嬉しかった。
 一度だけ、制服姿を見た。私立の女子高。中学からそのまま上がる子が多いらしいから、彼女もそうなのかもしれない。
 名前も知った。
 友人たちが、真由、と呼んでいたから。
 でも、彼女に声を掛けることはしなかった。
 向こうは、俺に気付いていない。女子校育ちなら、いきなり知らない男に声を掛けられても、うざがられるだけだ。
 それは、彼女をただ見ているだけの言い訳かもしれないけれど。
 受験生は、勉強以外の時間が、止まっている。
 存在はしていても、先には進まない。
「あの子たち、どこの大学を受けるんだろうな」
 智史が、俺の気持ちを代弁したかのような台詞を言う。
「さぁな」
 素っ気なく答えた俺に、智史がにやりと笑う。
「聞いてきてやろうか」
 俺は無言で、智史の顔を見た。言うまでもないことに、智史は肩をすくめる。
「受験生だもんな。恋なんてしてられない、ってか」
 そういうこと。
 恋なんてしてる場合じゃない。
 恋、なんて。


 受験が終わってしまえば、彼女との接点はなくなる。
 二度と会えなくなるかもしれない。
 けれど、彼女がどの大学を受けるのか、俺は確認しなかった。なんとなく、ただなんとなく、彼女との縁が切れてしまうようには思えなかったから。
 第一志望の入試日に、彼女の姿をみつけたときは、やった、と思った。
 大学の入学式で、彼女を見たときには、ちょっと神様に感謝した。
 そして、桜の花びらが、俺たちを出会わせてくれた。
 掲示板に見入る女性の、髪の先にみつけた桜の花びら。
 手を伸ばした気配に気付いた女性が振り返る。
 少し、驚いたような顔をして…。

           【完】(テーマ:三部作・その2)




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