なつこのはこ(創作のはこ)

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit   

ショート・ショート

「ひとひらの花びら」その2

  (昨日のつづき)

 昼時を少し過ぎた学食は、それでもまだ混んでいる。
 圭太と真由は、B定食を前に、向かい合っていた。
 お腹は空いていた筈なのに、2人とも箸はすすまない。途切れがちな会話に、はらはらしながら、近くにいた上級生が懐かし気にそっと見守っている。
 もうこれ以上は無理、と真由が箸を置いたのを見て、圭太も箸を置いた。
「…俺、さ。Y予備校へ通ってたんだ。夏期と冬期」
 真由が、圭太の顔をみつめた。
 言葉を続けようと圭太が口を開きかけたとき、無粋な声が割り込んだ。
「あ、新川さん、教授が探してたよ」
 一瞬、止まってしまったような2人の空気を感じて、クラスメイトは気まずそうに立ち去っていった。
 俯いたまま、なかなか席を立とうとしない真由に、圭太はこう言った。
「出ようか」
 はっ、と顔を上げた真由に、圭太は笑いかける。
「また、会ってくれる? 明日、ここで」
 圭太は、頷く真由の笑顔をみつめながら、桜の花びらに感謝した。


 学食の脇にも、染井吉野の木が一本植えられている。
 2人が外へ出ると、一陣の風が吹き、目の前を花吹雪が舞った。
 思わず、圭太の口から言葉が出た。
「来年も、一緒に桜を見よう?」
 言ってしまってから、自分の恥ずかしい発言に、耳まで真っ赤になった。
 そんな圭太に、真由の顔がほころぶ。
「うん。一緒に、見たい」
 2人は歩き出す。
 花吹雪の中を。
 柔らかな新緑が萌えるキャンパスの中で。
                 【完】(テーマ:三部作/1)




*Edit ▽TB[0]▽CO[0]   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。