なつこのはこ(創作のはこ)

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ショート・ショート

「ホワイトデー」

 
 ぼくは今、とっても困ってるんだ。
 この前、幼稚園バスが一緒の女の子からチョコをもらった。バレンタインデーのチョコだってことくらい、ぼくだって知ってるよ。
 そうしたら、お母さんが言ったんだ。
「チョコを貰ったら、お返しをあげなくちゃね」
 お返しをあげたら、ぼくも好きってことになっちゃうの?
 そんなの、困るよ。
 だって、ぼくは、違う女の子が好きなんだから。
 ホワイトデーの日、チョコをくれた子に、ぼくはお返しをあげられなかった。その子には、お母さんがクッキーをあげてた。
「まだ年長さんだもの。きっと意味がわかってないのよ」
 お母さんは笑いながら、その子のお母さんにそう言った。
 違うよ。
 ぼくは、好きな女の子に、お返しをあげたかったんだ。
 その女の子は、違う子にチョコをあげてた。
 だから、クッキーをあげられない。もらってないから。
 ぼく、チョコをもらった日のお弁当、残しちゃったのにな。お母さん、覚えてないのかな。


 あの年長の時以来、ずっとバレンタインデーは苦手なんだ。
 小学校の時は、どうにかやり過ごしたっていうのに。
 やばい。
 泣かせちゃったよ。
 中学校の体育館裏で、オレはとても困っていた。
「どうして…」
 だから、貰えないんだって。お返しをあげられないから。
「義理チョコ、って言ったのに…」
 だったら、どうして受け取らないって言っただけで、泣き出すんだよ。義理ならいいじゃないか、貰わなくたって。
「ひどい、藤沢君」
 その子の隣に立っていた友だちが、親の敵でも見るような目つきで睨んでいた。
「貰うくらい、いいじゃん。この子、頑張って作ったんだよ」
 手作りチョコなんて、もっと困るよ。
 だから、嫌いなんだ、バレンタインなんて。
 その後、学校じゅうに、オレがチョコを受け取らなかった話は広まった。
「なんで、貰わなかったの」
 違う小学校だった結城が、ゲームの手を止めて聞いてきた。
 オレは一瞬言葉に詰まったけれど、好奇心ではなく、心底不思議そうな顔をしていたから、渋々話した。
「…お返しは、好きな女の子にあげたいから」
「へっ?」
 半分呆れたような顔をして、結城はオレをみつめた。
 こいつは、女子にもてるんだ。くれるっつうものは貰っとく、なんてさらりと言うんだもんな。中1のくせに、チョコを貰い慣れてる奴ってどういうんだよ。
「義理チョコすら貰えない奴が聞いたら怒るよ、きっと」
 もう言われたよ。
 でも、しょうがないじゃんか。なんとも思ってない子には、あげられないんだ。
「好きな子ができた時に、貰うのもあげるのも1人にすればいいんじゃない?」
 それじゃあ、嫌なんだ。
「藤沢と一緒に、クッキー買いに行こうと思ってたのになぁ」
 結城は、大げさにため息をついた。
「今年からは、母さんも姉さんも1人で行けって言うんだよ」
 確かにホワイトデー売り場って、ちょっと恥ずかしいよなぁ。好きな子のためじゃなきゃ、ちょっと近寄れない。
「好きな子もいないくせに…」
 うるさいなぁ。
 いつかできるよ、好きな子くらい。そうしたら、ちゃんと告白して、バレンタインデーに堂々とチョコを貰うんだ。
「告白、ね…」
 そうさ。そうしたら、一緒にクッキー買いに行ってやるよ。
 だから、いいんだ。
 それまでは、オレは、チョコは貰わない。
 好きな子に、お返しをあげるために。
                         【完】




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