なつこのはこ(創作のはこ)

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ショート・ショート

「2人の間に雪は降り積む」その1(テーマ:雪)

   どうりで冷えると思ったら、雪か…。
 残業を切り上げて、早めに帰った方が良さそうだな。
 窓から見える景色が、少しずつ白くなってゆく。
 寒いのが嫌いだった彼女。
 あの日も、こんな雪が降っていた。

 不動産屋へ鍵を返して、無事に引き渡しは終わった。
 本格的に雪が降り出す前に終わって、良かった。
 そう思いながら、アパートの階段を下りる。
 その先に、彼女の姿があった。
 どういうことなんだ。何故、彼女は驚いている。
「急に立ち止まるなよ」
 後ろを歩いていた高木が、疲れた声で文句を言った。
 俺を追い越そうとした、高木の方が立ちすくむ。
 大きな目を見開いて、俺をみつめる彼女と、事情の呑み込めない俺、そして、絶句している高木。
「麻衣ちゃん…」
 血の気のない唇。
 雪の中、いつからここにいたんだ。
 近寄ろうとした俺を拒むように、彼女が呟いた。
「引っ越し、今日、だったの…?」
 俺は、高木を見た。
 あいつは、苦しそうな表情で、俺の視線を避けた。
 背後の音に振り返ると、彼女は駆け出していた。
 後を追おうとした俺の背に、高木が叫ぶ。
「行くなっ」
 俺の足は縫い止められたように動かなくなり、彼女の後ろ姿は見る間に小さくなっていった。

(つづく)



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