なつこのはこ(創作のはこ)

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「昔々のお話」

昔々のお話・番外編「黄葉の山」

  (これは、飛鳥に統一国家ができる、ずっと以前のお話「昔々のお話」の番外編です。
  昔々のお話・1「名を教えて」

 カルラは、山の中を進んでいた。
 視線の先には、ナウラとツユチカの姿がある。
 音を立てないように跡を付けていたカルラは、突然の声に飛び上がるほど驚いた。
「何してんの?」
 気配を感じさせず背後に立っていたのは、郷(さと)を留守にしている筈のカヤだった。
 カルラが向かっていた先をみつめると、カヤは低い声で尋ねた。
「あの2人、どこへ行くんだ」
 いつものように家へやって来たナウラが、何か言い淀んでいるのは見てわかった。何の用事だろうと、カルラとツユチカが言葉を待っていると、いきなりナウラがツユチカの腕をつかんで、外へ出ていったのだ。
 その思い詰めた様子を訝しく思ったからこそ、こうしているのであって、どこへ行き、何をしようとしているのかは、カルラの方こそ聞きたかった。
「行っちゃうぞ」
 カヤの言葉で我に返ったカルラは、2人の姿を見失うまいと後を追った。
 歩きながら手短に説明すると、カヤもついてくると言う。
 カルラは黙って頷いた。


 ツユチカの腕をつかんだまま、ナウラは歩き続けている。
 こんなに山の奥まで入り込んで、一体何をするつもりなのかと、追いかけるカルラとカヤの不安は高まるばかりだ。
 とうとう道なき道も行き止まり、ナウラは足を止めた。
 カルラとカヤは、木の陰からこっそりと様子を伺った。
 ナウラは何をするでもなく、ただ立ち尽くしている。ツユチカも何か尋ねる様子はない。
 とうとうカヤが焦れて、足を踏み出そうとした。
 それを、カルラが止めた。
 何か起こってからでは遅い、と険しい目で振り返るカヤに、カルラは首を傾げて尋ねた。
「ねぇ、2人きりで山の奥まで来たら、すること決まってるわよね」
 何を言い出すのかと不審に思いながら、カヤは答えた。
「そりゃあ、普通は1つだろ。って、え? まさか…」
「その、まさか、じゃない?」
 2人は呆れたように、動かないナウラをみつめた。
 試しに、カルラがツユチカに思念を送ってみる。
 すると、返事が返ってきた。
《やっぱり、俺が押し倒した方がいいのかな…》
 その言葉に、深いため息をついたカルラとカヤであった。
《さっさと押し倒せよ》
 拍子抜けしたカヤが、投げやりに思念を送る。
《だって、おまえ…》
《いいよ。ナウラがそうしたいのなら》
 独り占めしたいからといって、彼女の気持ちを縛ろうとは思わない。たとえ、大嫌いと叫ばれ続け、いまだ関係を持てなくとも。
《…わかった》
 ツユチカが、ナウラの手を取る。
 驚いた顔をみつめて、ツユチカは微笑んだ。ほっとしたように、ナウラが笑う。
 今度は、ツユチカがナウラの手を引いて、鮮やかに色づく山の中へと消えていった。
「世話が焼けるわね」
 苦笑するカルラに、カヤは肩をすくめた。
「自分が押し倒しなさいよ」
「まぁな」
「まったくわからない。ナウラもカヤも。お互いこれ以上ないってくらい好きなくせに」
 ふふん、と笑うと、カヤはカルラの肩に手をかけた。
「なぁ。綺麗だな」
 そう言われて辺りを見回すと、黄色や赤に色づいた木々は鮮やかで、このまま戻るのは惜しいくらいだった。
「ゆっくりしていこうぜ」
 そう言って、カヤが片目を瞑る。
 仕方ないわね、カルラは笑いながらそう答えたのだった。
                                            【完】




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