なつこのはこ(創作のはこ)

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「昔々のお話」

昔々のお話・番外編「朔の夜」その2

  (昨日のつづき)

 それから、時折、ナウラとギダは夜の闇にまぎれて会った。
 土蜘蛛と会っていることを知られてはならない。
 2人が会うのは、月の光が弱い時だった。
 ナウラは、ギダが土蜘蛛の後継者であることを知った。
 彼が、人知れず悩んでいることを、知った。
「何故、土蜘蛛と人は、歩み寄れないんだろう」
 そもそもの始まりはなんだったのか。今ではもう、両者は相容れることができないほどに、溝が深まっている。
 ギダは、そんな現状を憂いていた。
 今は無理でも、自分の世代になったら、なんとかすることはできないだろうか、そう考えていた。
 ナウラは、その悩みをただ聞いていた。
 ギダの言いたいことはわかる。
 だが、その溝を埋めるのは、不可能のように思えた。
 だから、ただ聞いてあげることしかできなかった。


 会う回数が重なるにつれ、回りへの警戒心は薄れていった。
 今宵は、朔。
 カヤと言い争って飛び出した夜が、よりにもよって朔であることを、2人はうっかり忘れていたのだ。
 しゃくり上げるナウラを、ギダが優しく抱きしめる。
 そんな2人をみつめる、闇に光る目。
 跡継ぎに女が出来たと勘違いする土蜘蛛がいても、おかしくはない。
 その上、それはカヤの女。女をさらえば、カヤに意趣返しができる。
 そう考えた輩が、2人の前に姿を現した。
「若、この女に決めたんですね」
 ギダが否定しても、その男は聞き入れなかった。
 とにかく目出度いと大声で騒ぎ、王に目通しさせるのだと息巻いている。
 次々と現れた仲間たちに囲まれ、2人は逃れられないと悟った。
 ギダはナウラを守るように肩を抱いて、小声で囁く。
「必ず、地上へ返すから」
 こうなっては、ギダを信じるしかない。ナウラは諦めて、土蜘蛛の本拠地へと足を踏み入れた。


 後悔しても、もう遅かった。
 ナウラを救うために、後を追ってきたカヤとツユチカ、そしてカルラの3人。
 ギダの言葉を王が受け入れ、無事に地上へ戻れる筈だった。
 それなのにツユチカだけが取り残され、ギダが連れてきた時には、既に息絶えていた。
 カルラだけは、まだ生きていると言い張った。
 確かに、ツユチカの身体は、生きている時と少しも変わらない。
 あれから、3ヶ月。
 片時もそばを離れようとしないカルラは憔悴しきっている。
 ナウラには、遠くから見守ることしかできなかった。
 地上へ戻るとき、ナウラにだけ聞こえる小さな声で、ギダは言った。
『ごめん』
 ギダは、悪い人じゃない。
 けれど、土蜘蛛と人は、やはり相容れない存在だったのだ。
 今宵、遂にツユチカを荼毘にふすのだという。
 私は行ってはいけない。
 踵をかえしたナウラの背に、カヤが声を張り上げる。
「ツユチカが目を覚ましたぞ」
 振り返ると、カヤが、笑顔で頷いた。
 ナウラは、手で顔を覆った。
 指の間から、嗚咽が漏れる。
 ようやく涙を見せたナウラを、カヤが抱き寄せた。
 その腕の温もりは、あの夜を境にナウラが拒否し続けたもの。
 胸にとりすがり、声を上げて思う存分泣いたナウラは、その夜、3ヶ月ぶりにカヤの腕の中で眠ったのだった。
                                            【完】




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