なつこのはこ(創作のはこ)

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「昔々のお話」

昔々のお話・5「集落からの知らせ」その4

  昔々のお話・5「集落からのお知らせ」その1

(昨日のつづき)

 女の子よ、と赤子を抱いてカルラが言った。
 ナウラは隣に寝かされた赤子をみつめて微笑んだ。
「それで、どうしてツユチカの子なんだ?」
 後始末が済んで、ようやく対面できたカヤが面白くなさそうに呟く。
「仕方ないじゃない。ツユチカの方が力が強いんだから」
 あっさりと答えるナウラに、カヤはむくれた。
 以前、ナウラはツユチカの子を1人産んでいる。実を言うと、ツユチカの子は誰でも産めるわけではなく、誰とでも関係を持てるわけではない。
 ツユチカは、人間でも天人でもなく、天上界の者である。その力の強さ故、抱く女を選ばなければならなかったのだ。
 妊娠がわかったとき、ナウラは今度もツユチカの子だろうと感じていた。それを言ったら、カヤはがっかりするだろうし、実際のところ生まれてこなければわからないことだ。それで黙っていたのだが、やっぱり生まれた子はツユチカの子だった。
「俺の方が、回数は多い」
 その言葉に呆れたように、ツユチカは言った。
「回数の問題じゃないだろ」
「俺の子を産むまで、ツユチカと寝るのは断固阻止してやる」
 名問いの儀式をしたからといって、一夫一婦制ではないから、他の異性と関係を持つことに問題はない。それに、先月カルラが産んだ子は、カヤの子だ。
「カヤのいない時にするからいいもん」
 赤子をツユチカに渡しながら、ナウラが言った。
 言い合う2人をよそに、ツユチカはおっとりと微笑んでいる。腕の中で眠る赤子をみつめて、ツユチカは目を細めた。
「俺、当分仕事休む」
 拗ねるカヤに、駄目よ、と素っ気なくナウラが答えた。
 なんだかんだと言って、じゃれ合う2人を見て、カルラが言った。
「そんなことより、今度は自分の手元で育てなさいよ」
 ぎょっとしたように、2人がカルラをみつめる。
 ナウラは、思い切り首を横に振って。
 そんなこと、で片付けられたカヤは、情けなさそうにすがる目つきで。
 仕方なしに、カルラは譲歩した。
「…夜の間だけでいいから」
 集落全体で子どもを育てるという風習の中で暮らしたナウラには、母親1人が面倒をみるという感覚がない。その上、1人目の子は力を持っていたから、どう扱ってよいのかわからず、カルラに任せきりだったのだ。
「嫌だ」
 そう答えたのは、ナウラではなくカヤだった。
「夜は2人きりがいい」
 同意するように、ナウラが頷く。
 呆気にとられたカルラだったが、2人の顔をみつめて、諦めたようにため息をついた。
「お乳だけは、ちゃんとあげに来るのよ」
「わかった」
 数年後、ナウラはようやくカヤの子を産んだが、カルラの期待に反して、やっぱり手元で育てなかった。
「全く、もう」
 子ども好きなカルラは、たくさんの子の面倒を見るのは少しも嫌ではない。
 けれど、ナウラが愛するカヤの子すら育てようとしないのには、どうしても理解ができなかった。
「仕方ないんだよ。ナウラの育った環境では、それが当たり前だったんだ」
 集団で暮らす集落で育ったナウラと、家族単位で暮らす郷での暮らししか知らないカルラとでは、考え方や習慣に大きな隔たりがある。
「ツユチカは、ナウラに甘いんだから」
 ふふっとツユチカは笑って、カルラの頭を撫でる。
「カルラには、特別甘いと思うよ」
 そうかしら、と答えながらも、ツユチカに極上の笑みを返したカルラだった。


【次のお話をお楽しみに】



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